「評価とは、結果の採点ではなく、成長可能性と再現性を見極めること」
評価者研修を行う際、私は冒頭で必ず受講者の皆さんにお伝えすることがあります。
評価者としてまず押さえなければならないものは、次の3つだということです。
1つ目は、組織の方針。
2つ目は、組織の人事評価制度。
3つ目は、評価者としての自分自身のフィロソフィー(哲学)です。
この3つがそろっていないと、評価は必ずぶれます。
組織の方針を理解せずに評価すれば、会社が向かいたい方向とずれてしまいます。
制度を理解せずに評価すれば、基準が曖昧になります。
そして、自分の中に哲学がなければ、
その場その場の印象や感情に引っ張られてしまいます。
評価者に必要なのは、単に点数をつける技術ではありません。
「何を大事にして人を見るのか」という軸なのです。
私は評価を考えるとき、「成果」と「プロセス」の2軸で見ることがあります。
整理すると、評価対象はおおむね4つの類型に分かれます。
① 成果があがっていて、プロセスも良い
② 成果はあがらなかったが、プロセスは良い
③ 成果はあがったが、プロセスは悪い
④ 成果もあがらず、プロセスも悪い
①と④は比較的わかりやすいでしょう。
難しいのは、②と③です。
一般的な評価制度の上では、③のほうが②より高く評価されることもあります。
実際、成果が出ている以上、制度上そうなるのは理解できます。
MBOのように目標達成度を重視する仕組みであれば、なおさらです。
また、経営者にとっても、業績が最も重視される指標のひとつであることは間違いありません。
結果責任を問うこと自体は、経営でも現場でも当然のことです。
しかし、私は評価者としてのフィロソフィーの根っこの部分では、②を重視しています。
なぜなら、②には再現性があるからです。
成果がまだ出ていないとしても、プロセスが良い人は、
①考え方や行動の質が高い。
②やるべきことを誠実にやっている。
③正しい筋道で仕事をしている。
そういう人は、時間の経過とともに成果へ結びつく可能性が高いのです。
言い換えれば、そこには成長可能性がある。
今は未達でも、次につながる土台があるのです。
私は、長年部下の仕事を観察してきて、それに気づきました。
一方で、③はどうでしょうか。
たしかに一時的には成果が出ている。
しかし、そのプロセスが乱暴であったり、不適切であったり、
再現性に乏しかったりするなら、その成果は偶発的なものかもしれません。
ひと昔前であれば、「結果さえ出せばいい」と強く言い切れた時代もあったかもしれません。
けれども、現代は違います。
いまの企業経営は、「結果だけ」で評価される時代ではありません。
「どのような結果を出したか」だけでなく、
「どのようなプロセスでその結果を出したのか」が厳しく問われる時代です。
たとえば、
・社会に反するやり方で数字をつくっていないか。
・データ改ざんはないか。
・ハラスメントはないか。
・法令違反はないか。
・情報開示は適正か。
・内部統制は効いているか。
こうした問いが、経営にも現場にも突きつけられています。
実際、以前の東芝は不適切会計問題などを経て信用と企業価値を大きく毀損し、
その後の混乱を重ねた末に2023年12月に上場廃止となりました。
背景には「利益を出せ」という強い圧力と、それを止められない
統治上の問題があったと広く指摘されています。
また、ニデックでも2025年に子会社の不適切会計をめぐる調査が公表され、
株価が大きく下落しました。
つまり、結果を急ぐあまりプロセスが歪むと、市場はきちんと反応するということです。
企業は今や業績だけでなく、ガバナンスやコンプライアンス、人権意識、組織文化まで含めて
社会から評価されるようになっています。
逆に言えば、一時的に業績が落ちていたとしても、ビジネスモデルに合理性があり、
経営が健全で、社会的に見て正しいプロセスで事業を進めている会社は、
長期的に評価を取り戻すことがあります。
これは、企業経営だけの話ではありません。職場の人事評価も同じです。
私たち評価者が見なければならないのは、単なる結果の有無ではなく、
「その結果は再現可能なのか」
「その人の行動は次の成長につながるのか」
「そのやり方は組織として健全なのか」
ということです。
だから私は、評価制度上は③が②より高くなることがあると理解しつつも、
評価者としてのフィロソフィーの根源では、
②を大切にしたいと考えています。
成果がまだ出ていないとしても、正しいプロセスを踏み、誠実に努力し、
学びながら前進している人は、次に伸びる可能性が高いからです。
その人を見抜き、育て、報いることこそが、評価者の重要な役割ではないでしょうか。
評価とは、過去の結果を確認するための作業ではありません。
評価とは、未来の成長可能性と、組織に再現される価値を見極める営みです。
もし評価者が「数字だけ」を見てしまえば、組織は短期的には動くかもしれません。
しかし、人は育ちません。組織文化も育ちません。
逆に、結果と同時にプロセスを見て、再現性と成長可能性を見抜く評価ができれば、
人も組織も強くなります。
弊社の「評価者研修」は、評価のやり方だけを学ぶ場ではありません。
評価者としての哲学、判断軸、そして人に向き合う姿勢までを深く考える研修です。
そのため近年、ご依頼は着実に増えております。
なぜならこの研修が、評価技術の習得にとどまらず、
管理職に求められる経営リテラシーそのものを
高める機会として評価されているからです。
評価とは、人を査定する行為ではありません。組織の未来をつくる営みです。
私たちはこれからも、その本質を伝える研修を届けていきたいと考えています。
- 2026/03/18
- コンサルティング
- 投稿者:葛西 伸一





